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大阪高等裁判所 昭和54年(ネ)812号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

本件の事実関係は、本誌三九二号一五八頁に登載されている原判決についての説明を参照されたい。

【判旨】

二ところで、<証拠>によると、本件和解調書においては、その第三項において、昭和五二年二月一日を期限とする被控訴人の控訴人に対する本件建物明渡義務(以下「第三項義務」という。)が定められているとともに、その第五項において、二か月分以上の賃料債務不履行を理由とする契約解除を条件とする被控訴人の控訴人に対する本件建物明渡義務(以下「第五項義務」という。)が定められていることが認められるから、前記争いのない事実に照らすと、本件異議事件における被控訴人の請求は、本件和解調書に定める第三項義務および第五項義務の双方に関しており、この請求を控訴人が認諾した結果控訴人はその双方について強制執行をなしえなくなつたもののようにみえないではない。

しかしながら、前記争いのない事実、<証拠>を総合すると、控訴人は、被控訴人が第五項義務に関して債務不履行をしたとして昭和五一年九月二九日第五項義務につき執行文をえこれにもとづいて強制執行に及んだところ、被控訴人は、当時神戸簡易裁判所に、請求の趣旨を本件和解調書の執行力ある正本にもとづく強制執行不許とし、請求原因を要するに控訴人による契約解除の意思表示がされた当時において被控訴人に賃料債務不履行はないから契約解除は無効であつて右強制執行は違法であるとする本件異議事件を提起し、昭和五一年一一月九日同裁判所から本件異議事件の本案判決に至るまで本件和解調書にもとづく強制執行を停止する旨の決定をえたこと、本件異議事件において、控訴人は、右契約解除が有効である所以を主張し、なお、第三項義務の履行期限が到来した昭和五二年二月一日よりのちには、本件異議事件は第五項義務に関するものであるのに第三項義務に関しても強制執行を停止する理由がなく、本件異議事件の訴はその利益を欠くものであるなどと主張したこと、これに対し、被控訴人は、本件異議事件は賃料延滞による解除にもとづく強制執行についての異議であるから、控訴人の右主張は理由がないなどとの反論をしていたこと、しかるところ、控訴人は、本件異議事件が第五項義務に関するものであるとの理解のもとに、すでに第三項義務の履行期限が到来している以上無用の訴訟を避けるのが得策であるとの見地から本件異議事件における被控訴人の請求を認諾したこと、そして、控訴人は、改めて第三項義務につき執行文をえ、再度本件建物について本件執行に及んだことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の事実によると、本件異議事件における被控訴人の請求は、その掲げられた請求の趣旨そのものからすると、前記のとおり、第三項義務および第五項義務の双方をその対象としているようにみえないではないが、右認定にかかる本件異議事件における請求の原因その他における被控訴人の訴訟上の主張と対比してみるときは、右請求は第五項義務に限定されていたものと認めるのが相当であつて、控訴人がそのような理解のもとにその訴訟行為をしていたことは明らかであり、被控訴人も控訴人の右の理解を正当なものとしていたものと認められる。したがつて、本来は叙上の請求の趣旨は第五項義務のみに関するものであると明示されるべきであつたのであるが、そのような方途がとられなかつたからといつてただちに叙上の請求が第三項義務をも包含していたものと認めなければならないものではない。したがつて、控訴人の叙上認定も第五項義務に関する被控訴人の請求についてなされたものと認めることができる。

三そうすると、控訴人は、右認諾にかかわらず第三項義務についての強制執行をなしうるものというべきであるから、右強制執行が違法であることを前提とする被控訴人の損害賠償請求は、爾余の判断をするまでもなく失当として排斥を免れない。よつて、原判決中右請求の一部を認容した部分は失当であるからこれを取消して、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(朝田孝 富田善哉 川口冨男)

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